はじめに:なぜR言語とTidyverseを学んだのか
R言語を学び始めたのは2021年10月、社労士として人事データ分析の必要性を感じたからです。当時、Excelで数百人分の勤怠データを手作業で集計していましたが、ミスが多発し、毎月10時間以上を費やしていました。「プログラミングで自動化できないか」と調べたところ、統計解析に強いR言語とTidyverseに出会いました。最初の3ヶ月は書籍『Rではじめるデータサイエンス』を毎晩1時間読み進め、週末にコードを写経しました。初めてdplyrでデータ集計が一瞬で終わったときの感動は今でも忘れられません。半年後には勤怠分析を完全自動化し、作業時間を10分の1に削減できました。
私は元々、社会保険労務士として人事・労務の実務に従事していました。エクセルでの集計作業やデータ分析が日常業務の大半を占めていましたが、「もっと効率的にデータを扱いたい」「統計的な裏付けをもって提案したい」という思いから、R言語の学習を始めました。
プログラミング未経験の状態からスタートしましたが、わずか3ヶ月で実務レベルのデータ分析ができるようになりました。その鍵となったのが「Tidyverse」というパッケージ群です。
本記事では、私が実際に辿った学習プロセスと、Tidyverseの主要パッケージの使い方を初心者目線で解説します。
🎯 この記事で学べること
- R言語とTidyverseの基本概念
- dplyrを使ったデータ操作(filter, select, mutate, summarize)
- ggplot2による美しいグラフ作成
- tidyrでのデータ整形(pivot_longer, pivot_wider)
- 非エンジニアでも挫折しない学習方法
Tidyverseとは?データ分析を劇的に効率化するパッケージ群
Tidyverseは、R言語でデータ分析を行う際の「標準ツールキット」と呼べる存在です。以下の8つの主要パッケージで構成されています。
- dplyr:データ操作(フィルタリング、集計、結合など)
- ggplot2:データ可視化(グラフ作成)
- tidyr:データ整形(縦持ち・横持ち変換など)
- readr:データ読み込み(CSV、TSVなど)
- purrr:関数型プログラミング
- tibble:モダンなデータフレーム
- stringr:文字列操作
- forcats:カテゴリカルデータ(因子)操作
これらをまとめてインストールできるのがTidyverseの大きな魅力です。
dplyr:データ操作の5つの基本動詞
dplyrは「データ操作のための文法」を提供してくれます。特に重要な5つの関数(動詞)をマスターすれば、ほとんどのデータ操作が可能になります。
1. filter():行をフィルタリング
特定の条件に合致する行だけを抽出します。例えば、売上データから「2025年1月」のデータだけを抽出したい場合。
2. select():列を選択
必要な列だけを選び出します。大量の列があるデータから、分析に必要な列だけを取り出すときに便利です。
3. mutate():新しい列を作成
既存の列を使って新しい列を作成します。例えば、売上と利益率から「利益額」を計算する場合。
4. summarize():データを集計
データを要約統計量に集約します。平均、合計、最大値などを計算できます。
5. group_by():グループごとに処理
データをグループ分けして、グループごとに集計します。これがdplyrの真骨頂です。
ggplot2:美しいグラフを簡単に作成
ggplot2は「Grammar of Graphics(グラフィックスの文法)」という考え方に基づいた可視化ライブラリです。複雑なグラフも直感的に作成できます。
基本的な構文
よく使うgeom関数
- geom_point():散布図
- geom_line():折れ線グラフ
- geom_col():棒グラフ
- geom_histogram():ヒストグラム
- geom_boxplot():箱ひげ図
tidyr:データ整形の2大関数
データ分析では、「データの形」を変える作業が頻繁に発生します。tidyrはその作業を簡単にしてくれます。
pivot_longer():横持ちを縦持ちに
複数の列を1つの列にまとめます。例えば、月ごとに分かれた売上データを1列にまとめる場合。
pivot_wider():縦持ちを横持ちに
pivot_longer()の逆操作です。1つの列を複数の列に展開します。
実践例:実際の業務データで試してみる
ここまでの知識を使って、実際の業務でよくある「月次売上レポート作成」を自動化してみましょう。
このコードは、毎月手作業で2〜3時間かかっていた集計作業を、わずか数秒で完了させます。これがR言語とTidyverseの威力です。
非エンジニアが挫折しない学習方法
私自身が非エンジニアからR言語を習得した経験から、以下の学習方法を強くおすすめします。
🎓 3ヶ月でマスターする学習ステップ
- 1ヶ月目:基礎文法とdplyr
- R言語の基本文法(変数、関数、データ型)
- dplyrの5つの動詞を実務データで練習
- パイプ演算子に慣れる
- 2ヶ月目:ggplot2とtidyr
- 基本的なグラフ作成(棒・折れ線・散布図)
- データ整形(pivot系関数)
- 実務で使うレポートを1つ自動化
- 3ヶ月目:応用と自動化
- 複数のデータソースを結合(join系関数)
- R Markdownでレポート自動生成
- 定型業務を完全自動化
おすすめ学習リソース
- 書籍:『RユーザのためのRStudio[実践]入門』(技術評論社)
- 公式サイト:Tidyverse公式ドキュメント(英語だが図が豊富)
- 実践:Kaggleの初心者向けデータセットで練習
- コミュニティ:Tokyo.R(R言語ユーザーグループ)のイベント参加
まとめ:R言語で広がるキャリアの可能性
R言語とTidyverseを習得したことで、私のキャリアは大きく変わりました。
- データに基づく提案ができるようになり、社内での信頼が向上
- 定型業務の自動化により、月20時間以上の業務時間を削減
- 統計解析のスキルを活かしてコンサルティング案件を受注
- 最終的にエンジニアへのキャリアチェンジを実現
非エンジニアでも、正しい学習方法と実践の場があれば、確実にスキルは身につきます。特にTidyverseは、直感的な文法設計により、初心者でも習得しやすい設計になっています。
「データ分析ができる人材」は、あらゆる業界で求められています。ぜひこの記事を参考に、R言語とTidyverseの世界に飛び込んでみてください。